電源ユニットは、壊れると他の部品を巻き込む唯一の部品だ。そして規格の読み違いは「起動しない」ではなく「発熱する」という形で現れる。ここでは特定の製品を推すのではなく、自分の構成に合う1台を自分で選べるようになるための判断基準を順に説明する。なお価格・在庫・世代構成の変動は非常に速い。実際に購入する段階では、必ず販売店ページとメーカー公式の仕様表で最新の情報を確認してほしい。

必要容量はGPUとCPUの実消費電力から逆算する

容量の見積もりは、消費電力の大きい2つの部品から始める。GPUとCPUだ。この2つでシステム全体の7〜8割を占める。

GPUはTGP(Total Graphics Power、GPUカード全体が使う電力)またはTBPと呼ばれる値を見る。メーカーの製品ページに記載がある。ミドルレンジで200〜300W前後、ハイエンドでは450Wを超えるモデルもある。同じGPUでもカードメーカーのオーバークロック版は定格より数十W高いことがあるため、買う個体の仕様表を見る。

CPUはTDPではなく最大電力を見る。TDPは冷却設計の目安であって電力の上限ではない。実質的な上限は、IntelならPL2(短時間電力制限)、AMDならPPT(Package Power Tracking)にあたる。TDP 65Wの製品が瞬間的に100W以上を引くことは珍しくない。

残りはマザーボード、メモリ、SSD、ファン、水冷ポンプなどで、一般的な構成なら50〜100Wを見込めば足りる。ここまでの合計が、システムのピーク消費電力の目安になる。

例えばTGP 350WのGPU、PPT 200WのCPU、その他80Wという構成なら合計630Wだ。ただし電源容量を630Wに合わせてはいけない。ここに余裕を足す。

余裕を持たせる理由は効率とスパイク

1つ目の理由は効率だ。電源の変換効率は負荷率によって変わり、多くの製品は負荷率40〜60%付近で効率がピークになる。ピーク630Wの構成に1000W級を組み合わせれば、ゲーム中の実負荷が効率の良い帯域に収まる。無駄な発熱が減り、ファンの回転数も上がりにくくなる。

2つ目は電力スパイクだ。現代のGPUは、平均消費電力の2〜3倍に達する電流を1000分の1秒以下の単位で引くことがある。平均値では容量内に収まっていても、この瞬間的な跳ね上がりで電源の保護回路(過電流保護・過電力保護)が作動し、PCが突然再起動したりシャットダウンしたりする。原因が分かりにくい不具合の典型例だ。

実用的な目安として、合計ピーク消費電力の1.4〜1.6倍を容量にする。先の630Wの例なら850〜1000Wが妥当な範囲になる。後述するATX 3.x準拠の電源は規格そのものがスパイク耐性を要求しているため、旧来のATX 2.x世代より余裕を詰めても安定しやすい。

80 PLUSとCyberneticsの読み方

認証ラベルは変換効率の指標だ。80 PLUSは負荷率20%・50%・100%の3点で効率を測り、等級を与える。日本の家庭用コンセントは100Vなので、115Vの表を見る。欧州向けの230V基準は同じ等級でも2〜3ポイント高い数値になっており、それを日本の環境に当てはめると過大評価になる。

等級(115V)負荷20%負荷50%負荷100%
80 PLUS80%80%80%
Bronze82%85%82%
Silver85%88%85%
Gold87%90%87%
Platinum90%92%89%
Titanium92%94%90%

等級が上がるほど発熱と電気代は減るが、価格差を電気代だけで回収するのは難しい。GoldとPlatinumの差は50%負荷でわずか2ポイントだ。等級は電気代の指標というより、その電源にどれだけ設計と部品のコストがかけられているかの間接的な目安として見るほうが実態に合う。一般的な自作機ならGoldが価格と品質の釣り合う位置にある。

Cybenetics(サイベネティクス)は近年採用が増えている第三者認証で、2つの軸を持つ。ETAが効率、LAMBDAが騒音だ。ETAは3点測定ではなく広い負荷範囲を連続的に測り、待機電力も評価に含めるため、実使用に近い評価になる。LAMBDAは実測騒音をdB(A)で区分したもので、静音性を数値で比較できる認証は他にほとんどない。静かなPCを組むならLAMBDAでA以上を目安にすると絞り込みやすい。ただし取得は任意であり、優れた電源でも未取得のことがある。認証の有無だけで候補を切らないほうがいい。

ATX 3.x/PCIe 5.1対応と12V-2x6コネクタ

ATX 3.0以降の規格は、GPUの電力スパイクを前提に作られている。定格の200%といった短時間の過負荷に耐えることが要求されており、瞬間的な変動に強い。改訂版のATX 3.1およびPCIe 5.1では、GPU用コネクタが12VHPWRから12V-2x6に変更された。

12V-2x6は形状の互換性を保ったまま端子の長さを見直したものだ。電力を流す端子を長く、挿し込み状態を検知するセンス端子を短くすることで、奥まで挿さっていない状態では電力が供給されない構造になっている。中途半端な接触のまま大電流が流れて発熱する事故を、設計で防ぐ狙いがある。逆に言えば、旧来の12VHPWRにはその保護がない。

奥まで挿す、根元で曲げない

このコネクタで最も多いトラブルは、接触不良による発熱だ。最大600Wを12本の細い導線で運ぶため、電流の余裕は大きくない。守るべき点は2つある。

まず、挿すときはラッチが完全にかかり、カチッと音がするまで押し込む。挿した後にコネクタの合わせ目を目視して、隙間が残っていないか確かめる。サイドパネルを閉じる前にもう一度確認する。

次に、コネクタの根元でケーブルを曲げない。GPUメーカーは、コネクタから最低35mmは直線を保ってから曲げるよう案内している。根元で曲げると端子に片寄った力がかかり、接触面積が減って一部のピンに電流が集中する。ケースの奥行きが足りずサイドパネルにケーブルが押されて曲がってしまう場合は、メーカー純正のL字アダプタを使うか、ケース側の見直しを検討する。無理に押し込んで閉めるのが最も危険だ。

変換ケーブルは付属品に限る

GPUに付属する、PCIe 8ピン3〜4本から12V-2x6に変換するケーブルは、そのGPUのために検証された部品であり、使うこと自体に問題はない。ただし接点が増える分、確認すべき箇所も増える。8ピン側も含めてすべて奥まで挿し込む。

避けるべきは、出所の不明な汎用変換ケーブルと、8ピン1〜2本から12V-2x6を作るような本数の足りない分岐ケーブルだ。PCIe 8ピンの定格は150Wで、2本でも300Wにしかならない。600Wを要求するGPUに不足した本数で給電すれば、ケーブルと端子が定格を超えて発熱する。

ATX 3.x対応電源を選ぶなら、変換を挟まず電源本体から出る12V-2x6ネイティブケーブルを使うのが最も接点が少なく安全だ。GPUが2本要求する構成もあるため、必要本数を先に確認する。

ケーブル種別と、他社ケーブル流用の危険性

ケーブルの取り付け方式は3種類ある。直付け(非モジュラー)はすべてのケーブルが電源から生えている方式で、安価だが使わないケーブルもケース内に押し込む必要がある。セミモジュラーは必ず使う24ピンとEPS(CPU補助電源)だけが直付けで、残りが着脱式。フルモジュラーはすべて着脱式で、配線が最もきれいにまとまり、ケースからの脱着も容易になる。エアフローと組みやすさを重視するならフルモジュラーが扱いやすい。

ここに重大な落とし穴がある。モジュラーケーブルを別メーカーの電源に流用してはいけない。同じメーカーであっても、別モデル間で流用してはいけない。

理由は電源本体側のピン配置にある。コネクタ形状は各社ほぼ共通なのに、どのピンに12Vを割り当てるかは製品ごとに異なる。形が合うので物理的には挿さってしまう。しかし12Vとグラウンドが入れ替わっていれば、電源を入れた瞬間にショートし、つながっている部品ごと壊れる。メーカー保証も適用されない。パーツ側(24ピンやPCIe側)の形状が同じであることは、電源側の互換性を何ら保証しない。

したがって電源を買い替えたら、ケーブルはすべて新しい電源に付属したものへ交換する。古いケーブルは元の電源本体とセットで保管するか、処分する。本数や長さが足りない場合は、その電源のメーカー純正品か、対応型番を明記しているケーブル専門メーカーの製品を型番指定で購入する。

買い替え時に確認すべきチェックリスト

  1. 容量 — GPUのTGPとCPUのPL2/PPT、その他50〜100Wを合計し、1.4〜1.6倍した値が目安。将来GPUを載せ替える予定があるなら、その分も見込む。
  2. GPU用コネクタの本数と定格 — 12V-2x6が何本必要か、各ケーブルが600W対応かを確認する。従来のPCIe 8ピンで足りるGPUなら本数だけ数える。
  3. EPS(CPU補助電源)の本数 — 8ピン1本の板と2本要求する板がある。マザーボード側の仕様を先に見る。
  4. 規格世代 — ATX 3.1/PCIe 5.1対応か。旧世代のGPUを使う場合でも、スパイク耐性の点で新規格に利がある。
  5. 物理サイズ — ATX、SFX、SFX-Lのどれか、そして奥行きが何mmか。ケースの対応値を必ず確認する。ケーブルの曲げ代も含めて収まるかを考える。
  6. ケーブル長 — 裏配線をするとEPSケーブルは長さが必要になる。フルタワーやE-ATX構成では特に確認する。
  7. SATA・ペリフェラルの口数 — HDDや変換基板を多く積む構成では不足しやすい。
  8. 保証期間 — 5年から12年まで幅がある。内部部品の品質に対するメーカー自身の見立てが表れる項目として参考になる。
  9. 認証 — 80 PLUSは115V基準で読む。Cybenetics ETA/LAMBDAがあれば効率と静音性をより実態に近い形で比較できる。
  10. 古いケーブルを流用しない — 新しい電源の付属ケーブルにすべて入れ替える。

買い替えを判断する基準は、容量不足だけではない。使用年数が7〜10年を超えた電源は、内部のコンデンサが劣化して出力が不安定になりやすい。新しいGPUが要求するコネクタを持たない場合も、変換で引き延ばすより本体を替えたほうが安全で確実だ。逆に、まだ数年しか使っておらず容量とコネクタが足りているなら、認証等級を1段上げるためだけの買い替えは費用に見合わない。まずは今の構成のピーク消費電力を計算し、それが手持ちの電源の何%にあたるかを出すところから始めてほしい。