症状を三つに分けてから手を動かす
「電源は入るのに映らない」は、内部では別々の状態を指している。ケースを開け、電源投入から10秒間を観察してほしい。第一に、ファンが回り続けマザーボードのLEDも点灯するのに映像だけ出ない状態。第二に、一瞬回って止まる、あるいは起動と停止を繰り返す状態。第三に、ファンは回るがマザーボードのデバッグ表示が特定の位置で止まっている状態である。
二つ目に当てはまるなら、映像ではなく起動そのものが失敗している。CPU補助電源の挿し忘れ、電源ユニットの容量不足、どこかのショートが典型的な原因になる。手順3から読んでよい。
手順1:マザーボードのPOST表示を読む(1分・道具不要)
最近のマザーボードは、起動のどこで止まったかを本体が示す。ASUSのQ-LED、MSIのEZ Debug LED、GIGABYTEの状態表示LEDは、CPU・DRAM・VGA・BOOTの4つのうち失敗した段階のものが点灯したままになる。ASRockのDr.Debugは2桁のコードを表示し、対応表は製品マニュアルにある。POSTとは電源投入直後にパーツを点検する処理を指す。
| 点灯したままのLED | 意味 | 次に読む手順 |
|---|---|---|
| VGA | 映像出力の初期化に失敗 | 手順2・手順3 |
| DRAM | メモリを認識できていない | 手順4・手順5 |
| CPU | CPUの初期化に失敗 | 手順3・手順6 |
| BOOT、または全消灯 | 起動処理は進んでいる | 手順2 |
BOOTまで進んでいるのに映らないなら、原因はほぼ出力側にある。ビープ音での判別はケーススピーカー(小さなブザー)を接続していないと鳴らないため、最近の自作機では使えないことが多い。
DDR5環境では注意点がある。メモリ交換後やCMOSクリア後の初回起動では、メモリトレーニングという調整処理のため30秒から数分間、黒画面のまま止まったように見える。DRAM LEDが点灯していても、最低3分は電源を切らずに待つ。
手順2:挿している端子とモニターの入力切替(2分)
グラフィックボードを搭載した機体で、映像ケーブルをマザーボードのバックパネル側に挿している——これが最も多い。グラボを付けたら、ケーブルはグラボ側の端子に挿す。逆のパターンもある。Intelの型番末尾がFのモデル、AMDのRyzen 7500Fなどは内蔵GPUを持たないため、マザーボード側の端子には最初から何も出力されない。
モニター側の入力切替も確認する。HDMI1とHDMI2、DisplayPortの区別は自動検出が働かないことがあり、手動で切り替えると映る場合がある。ケーブルを別の端子に挿し替え、モニターのメニューから該当入力を選び直す。
ここで映れば原因は確定で、対処は不要。映らなければ手順3へ進む。DisplayPortとHDMIの変換アダプタを使っている場合は、いったん外して直結で試す。変換アダプタには入力と出力の方向があり、逆向きでは動作しない製品が多い。
手順3:電源ケーブルを挿し直す(10分・電源オフ)
コンセントを抜き、電源ユニット背面のスイッチをオフにし、ケース前面の電源ボタンを数回押して放電させてから作業する。
確認するのは3系統ある。24ピンのメイン電源が奥まで刺さり爪が掛かっているか。CPU補助電源のEPS12V(8ピン、4+4に分割できるもの)が、マザーボードの指定する数だけ挿さっているか。8ピン2基のボードで1本しか挿していないと、起動しないか不安定になる。そしてグラフィックボードのPCIe補助電源である。
PCIe補助電源では、1本のケーブルの先端が2つに分岐しているタイプを、消費電力の大きいカードで2系統とも使うのは避ける。電源ユニット側の別々のコネクタから独立したケーブルを引く。12VHPWRや12V-2x6のカードは、カチッと音がして爪が掛かるまで確実に押し込む。半挿しは映らない原因になるうえ、発熱や端子の溶損につながる。
他社製の電源ユニットに付属していたモジュラーケーブルを流用してはいけない。コネクタ形状が同じでもピン配列はメーカーや世代ごとに異なり、パーツを破損させる。
最後にグラフィックボード自体を挿し直す。PCIeスロットのラッチを押し下げてから抜き、まっすぐ挿してラッチが戻る音を確認する。
手順4:メモリ1枚の最小構成で起動する(15分)
メモリの接触不良は、DRAM LEDが点かないケースでも起こる。まずメモリを全部抜き、1枚だけをCPUから2番目のスロットに挿す。多くのマザーボードでA2やDIMM_A2と印字された位置だが、必ず付属マニュアルの推奨スロット図で確認する。1枚で起動しなければ、同じ1枚を別のスロットへ、それでも駄目なら別のメモリに替えて同じ試行を繰り返す。「メモリ1枚×スロット位置」の組み合わせを変えることで、メモリ不良かスロット不良かが分かれる。
あわせて、ストレージや光学ドライブ、追加の拡張カード、前面USBの内部ケーブルも外し、CPU・クーラー・メモリ1枚・映像出力・電源だけの最小構成にする。ここで映れば、外したパーツを1つずつ戻して原因を特定できる。
手順5:CMOSクリアでBIOS設定を初期化する(10分)
メモリのXMPやEXPO(定格を超えた高速動作の設定)、オーバークロック、Resizable BAR、CSMやセキュアブートの変更後に映らなくなったなら、BIOS設定が原因である可能性が高い。CMOSクリアはこれを工場出荷状態に戻す操作を指す。
コンセントを抜いた状態で、マザーボード上のCLR_CMOSと書かれた2本のピンを金属で数秒短絡するか、背面パネルにClear CMOSボタンがあれば押す。どちらも無ければ、ボタン電池(CR2032)を外して5分ほど置き、向きを揃えて戻す。
実行すると日付、起動順序、ファン制御などの設定も初期化される。映るようになった後、元の設定を1つずつ戻していき、再発した項目が原因である。DDR5では前述のとおり、CMOSクリア後の初回起動に数分かかる。
それでも映らないときの切り分け
ここまでで直らない場合、疑う対象を機体の外へ広げる。別のモニター、別の映像ケーブル、テレビでもよいので他の表示装置につなぐ。ケーブル不良は見た目では分からず、断線していても外観に変化がない。
グラフィックボードを外し、内蔵GPUを持つCPUならマザーボード側の端子で起動を試す。映ればグラボかPCIeスロットに絞られる。可能なら、そのグラボを動作している別のPCに挿して確かめる。
新しい世代のCPUを、発売前に製造されたマザーボードに載せた場合はBIOSが対応しておらず、映像も出ないまま止まる。ASUSのBIOS FlashBack、GIGABYTEのQ-Flash Plus、MSIのFlash BIOS Button、ASRockのBIOS Flashbackは、CPUやメモリ無しでUSBメモリからBIOSを更新する機能で、この状況を救える。対応しているかは各社公式サイトの製品ページで確認する。
CPUクーラーの締め付けが不均一だと接触不良を起こす。いったん緩めて対角線順に締め直す。ソケットのピン曲がりも確認する。Intelの各LGAソケットとAMDのAM5はマザーボード側、AM4はCPU裏面側にピンがある。曲がっていた場合、自分で直そうとせず状態を撮影して窓口に相談したほうがよい。
自力対処をやめる判断基準
購入から日が浅いなら、時間を使う前に販売店へ連絡する。多くのショップは初期不良交換の受付期間を1〜2週間程度に定めており、その期間を過ぎるとメーカー保証扱いになって手続きも日数も増える。分解や熱伝導グリスの拭き取りが交換対象外の条件になる店もあるため、大がかりな作業の前に問い合わせる。
問い合わせでは、全パーツの型番、症状(ファンは回るか、LEDはどれが点くか)、すでに試した手順を伝える。切り分け済みの情報があるほど交換対応は早い。
最後に、原因が1つとは限らない。メモリの挿し直しで一度映り、その後また映らなくなるなら、接触不良と電源ユニットの劣化が重なっていることもある。1つ直っても再発するなら、手順1に戻って観察からやり直す。それが最短の道になる。