作業前に用意するものと決めておくこと
用意するものは4つです。8GB以上のUSBメモリ、メディアを作るための別のWindows PC、Windows 11のライセンス、アカウントをどうするかの方針です。USBメモリの中身はメディアを作るときにすべて消えます。必要なデータは先に退避してください。
メディア作成ツールはWindows上で動くアプリです。手元の別PCがMacだけの場合は手順が複雑になります。家族や知人のWindows PCを借りるほうが確実です。
ライセンスにはパッケージ版(リテール版)とDSP版があります。リテール版は別のPCに移せます。DSP版は最初に組み込んだPCで使うことが前提です。購入したのがHomeかProかも確認してください。インストール時に選ぶエディションとライセンスが合っていないと、ライセンス認証(正規品であることの確認)が通りません。プロダクトキーはインストール後に入力することもできます。
アカウントの方針も先に決めます。執筆時点(2026年10月)のWindows 11は、HomeでもProでも初期設定の途中でインターネット接続とMicrosoftアカウントへのサインインを求めます。ローカルアカウント(そのPCの中だけで使うアカウント)で使いたい場合も、いったんMicrosoftアカウントで初期設定を終え、あとで切り替える流れが確実です。この要求を回避する方法はいくつか知られています。ただ、Microsoftが更新のたびに塞いでいるため、ここでは紹介しません。
もう一つ準備しておくと安心なのが、マザーボードのLANドライバーです。メーカーのサポートページから、使っているマザーボードの型番に合うLAN(とWi-Fi)のドライバーを別のPCでダウンロードし、USBメモリに入れておきます。インストールメディアとは別のUSBメモリにするか、メディアを作り終えてから空き領域にコピーします。新しいマザーボードのLANチップはWindowsのインストーラーに標準のドライバーが入っていないことがあり、その場合に初期設定でネットに接続できず先に進めなくなるためです。
つまずきやすい4か所
初めてのインストールで止まりやすいのは次の4か所です。USBメモリから起動しない。インストール先にドライブが表示されない。ネット接続を求められて進めない。XMP/EXPO(メモリを定格より高速に動かす設定)を有効にしたら起動しなくなった。どれもPCを壊す種類のトラブルではなく、戻し方があります。それぞれの手順の中で対処法を説明します。
画面が映らない場合は、まずモニターのケーブルの挿し先を確認してください。グラフィックボードを取り付けたPCでは、マザーボード側の映像端子ではなく、グラフィックボード側の端子にケーブルを挿します。
手順1:インストールメディアを作る
別のWindows PCでMicrosoft公式のWindows 11ダウンロードページを開きます。「Windows 11 のインストール メディアを作成する」の項目からメディア作成ツールをダウンロードして実行します。言語は「日本語」を選び、作成するメディアは「USB フラッシュ ドライブ」を選びます。最後に対象のUSBメモリを指定すると、ダウンロードと書き込みが始まります。回線の速さによって数十分かかります。
途中でエラーが出たときは、USBメモリを挿すポートを変えるか、別のUSBメモリで作り直します。品質の低いUSBメモリだと書き込みや起動に失敗しやすくなります。
手順2:BIOSで確認する設定
自作PCの電源を入れた直後にDeleteキー(機種によってはF2キー)を何度か押すと、BIOS(UEFI)の設定画面が開きます。項目の名前と場所はメーカーごとに違います。見つからないときはマザーボードのマニュアルで確認してください。
起動方式はUEFI、CSMは無効
Windows 11はUEFI方式での起動が前提です。CSM(古いBIOS方式で起動するための互換機能)が有効になっている場合は無効にします。最近のマザーボードは初めから無効のことが多いです。
TPMはfTPMまたはPTTを有効にする
Windows 11はTPM 2.0(暗号鍵を安全に扱うためのセキュリティ機能)を必須としています。自作PCでは通常、CPUに組み込まれたTPMを使います。AMDではfTPM、IntelではPTT(Platform Trust Technology)という名前です。これが無効だと、インストーラーがシステム要件を満たしていないという趣旨の画面を出して止まります。
セキュアブートは有効にしておく
セキュアブートは、署名のない起動プログラムを読み込ませない機能です。Microsoftのインストールメディアは署名済みなので、有効のままでインストールできます。一部のオンラインゲームのアンチチート(不正対策ソフト)はセキュアブートの有効化を求めます。あとで切り替えると手間になるため、最初から有効にしておきます。マザーボードによっては、有効にする際に「デフォルトのキーをインストール」のような操作が必要です。
起動順は変えなくてよい
起動順を書き換えなくても、起動時にブートメニューキーを押せば一度だけUSBメモリから起動できます。キーはメーカーによって違い、F8、F11、F12などが使われます。インストールが終わったあとに起動順を戻し忘れる心配もありません。
XMP/EXPOはまだ有効にしない
メモリのXMP(Intel)やEXPO(AMD)は、Windowsのインストールと動作確認が終わってから有効にします。最初からメモリを高速設定にしていると、インストール中にエラーが起きたとき、原因がメモリ設定なのか別の部分なのか切り分けられないためです。
設定を変えたら、F10キーなどで保存して再起動します。
USBメモリから起動しないとき
まずブートメニューに「UEFI:」で始まるUSBメモリの項目があるか確認します。項目自体がない場合は、ケース前面ではなくマザーボード背面のUSBポートに挿し直します。BIOSの「Fast Boot」が有効だと起動時にUSB機器を読み込まないことがあるため、無効にして試します。それでも出ない場合は、別のUSBメモリでメディアを作り直してください。
手順3:インストール先のドライブを選ぶ
USBメモリから起動するとセットアップが始まります。言語とキーボードを選び、プロダクトキーを入力します。キーが手元にない場合は「プロダクト キーがありません」を選び、ライセンスと同じエディションを選びます。
ドライブの見分け方とパーティションの扱い
インストール先の画面には「ドライブ 0 の割り当てられていない領域」のように、ドライブが番号と容量で並びます。ドライブの名前は表示されないため、容量で見分けます。データ用のドライブを複数つないでいる場合は、インストール中だけそれらの電源ケーブルかデータケーブルを外しておくと、選び間違えを防げます。起動に必要なファイルが別のドライブに書き込まれる事故も防げます。
新品のドライブなら、割り当てられていない領域を選んで「次へ」を押すだけです。パーティション(ドライブ内の区画)を自分で作る必要はありません。起動用のEFIシステムパーティションや回復パーティションは、セットアップが自動で作ります。使っていたドライブに入れ直す場合は、そのドライブ上のパーティションをすべて削除してから選びます。削除したデータは元に戻せません。ドライブ番号をよく確認してから操作してください。
インストール先にドライブが表示されないとき
最初に、BIOSの画面でドライブが認識されているか確認します。BIOSにも表示されない場合は、M.2 SSDが斜めに浮いていないか、固定ネジが締まっているかを点検します。M.2スロットとSATAポートがレーン(データの通り道)を共有していて、組み合わせによってはどちらかが使えなくなるマザーボードもあります。マニュアルの仕様欄で確認してください。
BIOSには表示されるのにセットアップに出ない場合、Intel環境ではIntel VMD(Intel RSTの一部の機能)が有効になっていることが多い原因です。RAID(複数ドライブをまとめる構成)を使わないなら、BIOSでVMDを無効にすると表示されます。VMDを使う場合は、マザーボードのサポートページからIntel RSTのドライバーを入手してUSBメモリに入れ、インストール先の画面にある「ドライバーの読み込み」から読み込みます。
インストール中の再起動
ファイルのコピーが終わると、PCは何度か再起動します。最初の再起動でまたセットアップの最初の画面が出た場合は、USBメモリから起動し直しています。その場合はUSBメモリを抜いて再起動してください。途中で失敗したときは、もう一度USBメモリから起動し、インストール先のパーティションを削除して最初からやり直せば元に戻ります。
手順4:初期設定を進める
再起動が終わると初期設定の画面になります。国や地域に「日本」、キーボードに「Microsoft IME」を選び、ネットワークに接続します。続いてMicrosoftアカウントでサインインし、PIN(このPCでだけ使う暗証番号)を設定します。プライバシー設定の項目は、内容を読んで必要なものだけを有効にします。
ネット接続を求められて進めないとき
LANケーブルを挿しても接続できず、Wi-Fiの一覧も出ないなら、ネットワークのドライバーが入っていません。Shift+F10キーを押すとコマンドプロンプト(文字で命令を入力する画面)が開きます。事前に用意したUSBメモリを挿し、ドライブ文字を確かめてから、ドライバーのインストーラーをパスで指定して実行します。たとえばUSBメモリがDドライブなら、D:\LAN\setup.exeのように入力します。ドライバーがINFファイルの形式なら、pnputil /add-driver D:\LAN\*.inf /installで組み込めます。手元にドライバーがない場合は、AndroidスマートフォンのUSBテザリングで接続できることがあります。ただし機種によっては認識されません。
初期設定が終わったあとでローカルアカウントに切り替えたい場合は、「設定」→「アカウント」→「ユーザーの情報」から切り替えられます。この項目の名前や場所も執筆時点のもので、Windowsの更新で変わることがあります。
手順5:ドライバーを入れる順番
デスクトップが表示されたら、ドライバーを次の順に入れます。チップセット、LANとWi-Fi(まだ入っていない場合)、Windows Updateでの更新、グラフィックボードの順です。
最初はチップセットドライバーです。チップセットドライバーはUSBやPCI Express(拡張カードやSSDをつなぐ規格)の制御や電源管理の土台になるため、ほかの機器より先に入れます。入手先はマザーボードのサポートページか、AMDまたはIntelの公式サイトです。次にネットワークを確実に使える状態にし、Windows Updateを何回か実行して、表示される更新をすべて当てます。
最後にグラフィックボードのドライバーをNVIDIA、AMD、Intelの公式サイトから入れます。Windows Updateがすでに自動で入れている場合もあります。その上から公式の最新版を入れて問題ありません。音声やBluetoothのドライバーは、デバイスマネージャーで不足が見つかった場合に追加します。
マザーボードによっては、Windowsの起動後にメーカー製ユーティリティのインストールを自動で促す機能が有効になっています。不要な場合はインストールを断り、BIOSでその機能を無効にします。
手順6:XMP/EXPOを有効にする
Windowsが安定して動くことを確認してから、BIOSでXMPまたはEXPOのプロファイルを選び、保存して再起動します。設定を変えた直後の起動では、メモリトレーニング(メモリが確実に動く条件を探す処理)が行われます。特にDDR5メモリでは、画面が真っ暗なまま数分かかることがあります。その間に電源を切らないでください。
起動しなくなったときの戻し方
まず5分程度待ちます。多くのマザーボードは、何度か起動に失敗すると自動で設定を元に戻し、BIOS画面で通知します。待っても戻らない場合はCMOSクリア(BIOS設定の初期化)をします。電源を切り、電源ユニット背面のスイッチもオフにしてから、マニュアルに従ってCMOSクリアボタンを押すか、ジャンパーピンをショートさせます。CMOSクリアはBIOSの設定だけを初期化し、Windowsが入ったドライブには影響しません。初期化後は、手順2で確認したfTPM/PTTとセキュアブートが有効のままかを確認し直してください。
再挑戦する前に、そのメモリの速度がCPUとマザーボードの対応範囲に収まっているかを確認します。BIOSを更新すると安定することもあります。それでも起動しない場合は、ひとつ低い速度のプロファイルを選ぶか、手動で速度を下げます。
手順7:デバイスマネージャーとタスクマネージャーで最終確認する
スタートボタンを右クリックして「デバイス マネージャー」を開きます。黄色い「!」が付いた項目や「ほかのデバイス」という分類がある場合、ドライバーが足りていません。その項目の名前を手がかりに、マザーボードのサポートページから該当するドライバーを入れます。「ディスプレイ アダプター」に「Microsoft 基本ディスプレイ アダプター」と出ている場合は、グラフィックボードのドライバーが入っていません。
次にCtrl+Shift+Escキーでタスクマネージャーを開き、「パフォーマンス」を確認します。「メモリ」では容量、速度、使用中のスロット数が想定どおりかを見ます。速度がXMP/EXPOの値になっていれば設定は効いています。「CPU」ではコア数と論理プロセッサ数を製品仕様と比べます。「GPU」にはグラフィックボードの製品名が、「ディスク」には取り付けたSSDの容量が表示されるはずです。最後に「設定」→「システム」→「ライセンス認証」を開き、認証が済んでいるかを確認します。
確認が済んだあとの判断基準
ここまでの確認で問題がなければ、普段使うアプリやゲームで数日間使ってみます。XMP/EXPOを有効にしてからだけブルースクリーンや突然の再起動が起きるなら、まずメモリ設定を初期値に戻して様子を見ます。それで起きなくなればメモリ設定が原因です。初期値でも起きる場合は、ドライバーやハードウェアの取り付けを疑って順に確認してください。
以後の更新は、ドライバーはメーカー公式サイトとWindows Updateから入れます。BIOSの更新は、CPUの対応追加や不具合修正など、必要な理由があるときに実施します。