つまずきやすい箇所の一覧

初めての組み立てで起きるトラブルは、ほとんどが次の箇所に集中します。作業に入る前に一度目を通しておくと、原因探しの時間を大きく減らせます。

箇所起きること防ぎ方
CPUソケットのピン曲がり起動しない、メモリの一部が認識されない。修理が難しいソケットに触れない。CPUは真上から置く
メモリの半挿し画面が映らない。ビープ音やエラーLEDが出る両端のラッチが閉じるまで押し込む
CPU補助電源(EPS 8ピン)の挿し忘れ電源が入らない、またはすぐ落ちるマザーボード上部左の端子を必ず確認する
グラフィックボードの補助電源映らない。警告LEDが点くカードにある端子をすべて埋める
モニターの接続先の誤り起動しているのに映らないグラボがあるならグラボ側に挿す
フロントパネル配線ケースの電源ボタンが効かないマニュアルのピン配置図を見ながら挿す
スペーサーの位置違い基板裏がショートするマザーボードのネジ穴と一致する位置だけに付ける
クーラーの保護フィルムCPU温度が異常に上がる受熱面のフィルムを剥がしてから取り付ける

作業前の準備:工具・作業場所・静電気対策

必要な工具と物

必須なのはNo.2のプラスドライバー1本です。自作PCのネジはほぼこのサイズで足ります。軸の長いものがケース奥のネジに届きやすく便利です。M.2 SSDを固定する小さなネジにはNo.1が合う場合があります。

ほかに、ネジを入れておく小皿、結束バンド、ライトがあると作業が楽になります。各パーツのマニュアルは必ず手元に置いてください。特にマザーボードのマニュアルは、メモリを挿すスロットや配線のピン配置を確認するために何度も開きます。

作業場所

広くて硬い机の上で作業します。カーペットの上や布団の上は静電気が起きやすく、小さなネジも見失いやすいので避けます。仮組みはマザーボードが入っていた箱の上で行います。マザーボードが入っていた静電気防止袋の上には置きません。袋の外側が導電性の場合があり、通電時に基板裏がショートするおそれがあるためです。

静電気対策

パーツに触る前に、金属部分に触れて体の静電気を逃がします。静電気防止リストストラップを使うとより確実です。ウールやフリースの服は静電気を起こしやすいので、綿の服で作業します。基板は端を持ち、端子やチップ部分には触れないようにします。

手順1:パーツの互換性を最終確認する

開封したら、組み立て前に互換性を確かめます。ここを飛ばすと、後で壊すか入らないかのどちらかになります。

CPUソケットは、CPUとマザーボードで一致している必要があります。例えばAMDのAM5対応CPUはAM5のマザーボードにしか載りません。IntelもLGA1700とLGA1851のように世代でソケットが変わります。同じソケットでも、BIOSが古いと新しいCPUを認識しない場合があります。マザーボードメーカー公式サイトのCPUサポートリストで、必要なBIOSバージョンを確認してください。

メモリ規格はDDR4とDDR5で切り欠きの位置が違い、物理的に挿さりません。無理に押し込むとスロットを壊します。マザーボードがどちらに対応しているかを確認します。

CPU内蔵グラフィックスの有無も確認します。IntelのFが付くモデルなど、内蔵グラフィックスがないCPUでは、グラフィックボードがないと画面を表示できません。

手順2:CPUを取り付ける

マザーボードを箱の上に置き、CPUソケットのレバーを外側に押してから持ち上げます。固定金具が開きます。

CPUの角にある三角マークと、ソケット側の三角マークを合わせます。CPUの両側にある切り欠きもソケットの出っ張りと合う向きです。向きを確認したら、CPUを真上から静かに置きます。押し込む必要はありません。滑らせたり、斜めに落としたりするとピンが曲がります。

固定金具を戻し、レバーを下げて元の位置に掛けます。Intelの多くのマザーボードでは、このときソケットの保護カバーが押し出されて外れます。レバーを下げる際にかなり力が必要ですが、向きが正しければ異常ではありません。保護カバーは、マザーボードを返品や修理に出すときに必要になるので保管します。

確認方法:CPUが金具の下で水平に収まり、レバーがフックに掛かっていれば完了です。

失敗したとき:レバーが異常に重い、CPUが浮いている場合は、すぐにレバーを戻して向きを確認し直します。ソケットのピンが曲がっているのを見つけたら、通電しないで購入店かメーカーに相談します。LGAソケットのピンを自分で直すのは難しく、ピン曲がりはメーカー保証の対象外になることが多い点も知っておいてください。

手順3:メモリを挿す

2枚挿しの場合、どのスロットを使うかはマザーボードのマニュアルに書かれています。4スロットのマザーボードでは、CPUから数えて2番目と4番目(A2とB2)が指定されていることが多いです。仮組みで1枚だけ試す場合も、マニュアルが指定するスロットを使います。

スロットのラッチを開き、メモリの切り欠きとスロットの突起を合わせます。両端に親指を置き、垂直に押し込みます。カチッと音がしてラッチが自動で閉じるまで押します。片側だけ留めるタイプのスロットもあります。

確認方法:横から見て、メモリの金色の端子がほぼ見えず、左右の高さがそろっていれば挿さっています。

失敗したとき:半挿しは、後の手順で起動しないときの最も多い原因です。ラッチを開いて一度抜き、挿し直します。想像以上に力が必要ですが、マザーボードをたわませないよう、箱の上に置いたまま作業してください。

手順4:CPUクーラーを取り付ける

クーラーの取り付け方法は製品ごとに違うため、付属のマニュアルに従います。共通の注意点は3つです。まず、受熱面の保護フィルムを剥がすこと。次に、グリスが塗布済みでない製品では、CPUの中央に米粒大程度のグリスを置くこと。最後に、ネジは対角の順に少しずつ締め、片側だけを先に締め切らないことです。

クーラーのファンケーブルは、マザーボードのCPU_FAN端子に挿します。水冷クーラーの場合、ポンプ用にAIO_PUMPなどの端子が指定されていることがあります。

確認方法:クーラーを軽く揺すってもぐらつかなければ固定できています。

失敗したとき:グリスが大きくはみ出した場合や、フィルムを剥がし忘れた場合は、クーラーを外します。古いグリスを拭き取り、塗り直してから取り付けます。

手順5:最小構成で仮組みして起動を確かめる

ケースに入れる前に、マザーボード単体で動作を確かめます。ケースに入れてから不具合が分かると、原因を切り分けるために全部を取り外すことになるからです。

つなぐもの

最小構成は、CPU、メモリ、CPUクーラーを付けたマザーボードと電源ユニットです。内蔵グラフィックスがないCPUならグラフィックボードも挿します。SSDはBIOSの表示には不要なので、この段階では付けません。

電源ユニットから次のケーブルをつなぎます。

  • メインの24ピン(ATX電源)
  • マザーボード上部左のCPU補助電源(EPS 8ピン。4+4ピンで分かれているものもある)。端子が2つあるマザーボードでは、マニュアルの指示に従う
  • グラフィックボードを使う場合は、そのカードの補助電源(PCIe 8ピン、または12V-2x6)

CPU補助電源とグラフィックボード用のPCIe 8ピンは形が似ていますが、互換性はありません。ケーブルに印字されたCPUやPCIeの表記を確認してください。12V-2x6(12VHPWR)コネクタは、奥まで挿さっていないと発熱の原因になるため、隙間がなくなるまで確実に押し込みます。

モニターは、グラフィックボードを使うならグラフィックボードの端子に、使わないならマザーボードの映像出力につなぎます。

電源を入れる

電源ユニット背面のスイッチをオン(I側)にします。マザーボードに電源ボタンがあればそれを押します。ない場合は、マザーボード端のフロントパネル端子のうちPWR_SW(またはPWRBTN)の2本のピンを、ドライバーの先で一瞬だけ触れて短絡させます。ピンの位置はマニュアルで確認し、隣のピンに触れないよう注意します。

ファンが回り、しばらくしてメーカーロゴかBIOS画面が表示されれば成功です。DDR5メモリは初回起動時にメモリトレーニング(動作条件の自動調整)を行うため、画面が映るまで数分かかることがあります。途中で電源を切らずに待ちます。

映らないときの切り分け

多くのマザーボードには、CPU、DRAM、VGA、BOOTのデバッグLEDがあります。点灯したまま止まったLEDが問題の箇所を示します。電源を切り、電源ユニットのスイッチもオフにしてから、該当するパーツを見直します。DRAMならメモリの挿し直しや1枚での起動、VGAならグラフィックボードの補助電源とモニターの接続先、CPUなら補助電源とクーラーの取り付けを確認します。ファンがまったく回らない場合は、24ピンとCPU補助電源の挿し込みを疑います。

確認できたら電源を切り、電源ユニットのスイッチをオフにして、ケーブルを外します。

手順6:ケースに組み込む

組み込みは、電源ユニット、マザーボード、グラフィックボードの順に進めると配線しやすくなります。

まず、ケースのマザーボード取り付け面にあるスペーサー(基板をケースから浮かせる台座ネジ)の位置を確認します。マザーボードのネジ穴と一致する位置だけにスペーサーがある状態にします。穴のない位置に余分なスペーサーがあると、基板の裏と接触してショートします。I/Oパネル(背面端子のカバー板)が別部品の場合は、先にケースにはめ込みます。

電源ユニットを固定したら、マザーボードをスペーサーに合わせて置き、ネジで留めます。ネジは強く締めすぎないようにします。次に、仮組みで使ったケーブルを同じようにつなぎます。CPU補助電源はケース上部の狭い場所にあるため、マザーボードを入れる前に通しておくと楽です。グラフィックボードは拡張スロットに挿し、ケース背面でネジ留めします。SSDなどのストレージもこの段階で取り付けます。

確認方法:マザーボードの背面端子がI/Oパネルの穴と合っていることと、ケーブルがファンに接触していないことを確認します。

手順7:フロントパネルとファンを配線する

ケースの電源ボタンやLEDのケーブルを、マザーボードのフロントパネル端子(F_PANELやJFP1などの名前)に挿します。挿す位置はマザーボードのマニュアルにピン配置図があるので、それを見ながら1本ずつ挿します。

PWR_SWとRESET_SWはスイッチなので、向き(極性)はありません。POWER_LEDとHDD_LEDはLEDなので極性があり、+側を合わせる必要があります。LEDの向きを逆にしても壊れはしませんが、点灯しません。

フロントUSBやオーディオのケーブル、ケースファンのケーブル(SYS_FANやCHA_FAN)もこの段階でつなぎます。

失敗したとき:ケースの電源ボタンで起動しない場合は、PWR_SWの位置が1列ずれていることが多いです。電源ユニットをオフにしてから、ピン配置図と照らし合わせて挿し直します。

BIOS画面で確認することと次の作業

電源ユニットのスイッチを入れ、ケースの電源ボタンで起動します。画面が映ったらDeleteキー(製品によってはF2)を押してBIOSに入ります。確認するのは次の3点です。CPUの型番が正しく表示されていること。メモリの容量が取り付けた合計と一致していること。取り付けたSSDが認識されていること。

メモリ容量が足りない場合は、どれかが半挿しか、スロットの選び方が違う可能性があります。SSDが見えない場合は、取り付けとケーブル、M.2スロットの設定を確認します。3点がそろっていれば組み立ては成功です。次の作業は、必要に応じたBIOSの更新、XMPやEXPO(メモリを定格以上の速度で動かす設定)の有効化、OSのインストールです。XMPやEXPOを有効にした後で起動が不安定になった場合は、設定を無効に戻せば元の状態に戻せます。